日本人は卵が好きな民族だと言われています。
卵焼き、オムレツ、ケーキやプリンなどのお菓子。
一日一個は必ず食べているのではないでしょうか。
その卵がどのように作られているのか、卵を産む鶏がどのように飼育されているのか
あまり表沙汰にはされません。
なぜなら体の向きを変えられないほど狭い檻の中で抗生物質漬けにされ、ひたすら卵を
産まされ続ける過酷な環境であるからです。
一方で動物の福祉(アニマルウェルフェア)に配慮した方法で命に向き合っている
農家さんもいます。
生協元江別店の入って左側。地域でとれたご当地野菜が並ぶ「えべつ農園」
右端の冷蔵コーナーに平飼い卵が陳列されています。
卵を使ったシフォンケーキやプリンもあります。
以前卵のケースを捨ててしまうのがもったいなく農家さんに問い合わせしたところ、快く紙パック回収かごを作ってくださいました。
そちらが今回取材させていただいた「飛ぶ鳥農場」さんです。
平飼いというのは鶏を鶏舎で放し飼いする飼育方法です。
長年の品種改良により雌の鶏は交配なしに卵を産めるようになりました。
そのため交配しないで生まれた卵が「無精卵」交配して生まれた卵が「有精卵」となります。
平飼い飼育は大規模な檻による飼育より場所が必要で鶏の数も多くは飼えません。
そのため効率は良くありませんが、より自然に近い形でストレスを減らし鶏を飼えます。
市販の卵と比べると殻の硬さがまず違います。平飼い卵はとても硬いです。
卵の弾力も違います。格段にプリっとしています。
「飛ぶ鳥農場」さんは去年石狩の厚田に新規就農したお若いご夫婦が経営されています。
江別から車を走らせること1時間弱。
厚田の海風を感じた頃農場に到着しました。
江別の角山ファーム出身のヤギ「ユキちゃん」がお出迎え
外観は普通の一軒家です。玄関に手作りの可愛い看板が。
一見すると野菜を作っていそうなビニールハウスに鶏たちがいました。
なんとビニールハウスもご自身で建てられたそうです!
まず驚いたのは臭いです。
一般的な養鶏場は遠くからでも気付くほど鼻を衝く臭いがするのに対し、こちらは通り過ぎて
しまうほど(実際気が付かず素通りしました)臭いがしませんでした。
その秘密は、綺麗に行き届いた掃除と鶏たちに配慮された環境です。
ふかふかに敷き詰められた藁(わら)。100坪の広々とした鶏舎。
飼われているのは「ボリスブラウン」と「岡崎おうはん」の二種類の鶏。
手前の灰色の羽の鶏が岡崎おうはん、奥の茶色がボリスブラウン
鶏は一年半ほどで採卵率が落ちるため入れ替えが行われるそうです。
この仔達は一週間ほど前に由仁の孵化場からやってきました。
鳴き声の大きさで適温環境か、ストレスが無いかどうか判断されています。
こちらは毎日手作りされている餌
黒千石と呼ばれる黒い大豆を煮たものと規格外の玄米
角野さんにいくつか質問をしてみました。
Q.なぜ養鶏場をやろうと思ったのですか?
A.小さなころから動物が好きで、特に鶏が好きだったのでこの道を選びました。
出身は四国の徳島ですが、北海道の大学に進んで今に至ります。
Q.餌はどのようなものをあげているのですか?
A.北海道産100%の飼料を毎日手作りしています。
中身は、小麦、コメ、米糠、黒千石と呼ばれる黒い大豆を煮たもの、ホタテの貝殻、もみ殻などです。
卵には鶏が食べたもののにおいや色が移ります。市販されている卵の黄身がオレンジ色なのは
オレンジ色になるように配合された飼料を食べているからです。
一般的には動物性たんぱく質には魚粉を与えることが多いのですが、うちでは佐藤水産の鮭醤油かすを
使うことで卵に魚臭さが移ることはありません。
Q.新規就農の際、苦労したことはありましたか?
A.資金集めと土地探しに苦労しました。
研修の後3年間酪農ヘルパーをして資金をためました。厚田に腰を落ち着けたのは自然がいっぱいで
あることと友人が厚田にいたことが大きいです。
Q.今後の目標があれば教えてください!
A.養鶏の規模の拡大と卵と蜂蜜を使った小さなお菓子屋さんを開きたいです。
私たちの食卓に欠かせない卵。
市販の卵は特売だと1個10円で買えますが、そこには鶏の生態などお構いなしの犠牲が潜んでいます。
日本はまだまだ動物福祉について後進国といえますが、少しずつでも身近なところでの選択が次に
繋がるのではないかと思っています。
最後にパチリ!笑顔が素敵な角野さんご夫妻でした。
長々とありがとうございました。
角野さんのブログ http://tobutorifarm.hatenablog.com/