「NPO法人えべつ協同ねっとわーく」の理事も務める 株式会社ナラ工業の代表取締役 奈良幸則さんにお会いする機会をいただきました。野幌を中心に江別のまちづくりに関わる奈良さんの今までとこれからのお話しを聞くことができましたよ。
江別のまちの魅力を市民目線で発信するえべつ市民ブロガーズも何かしら江別のまちづくりに役立っていれば、幸いと思いますが・・・江別のまちづくりの顔といえば、この方!まちづくりの偉大な先輩です。
もくじ
北海道に建つ、作品に鋼板等が使用されている優れた建築作品を顕彰する北海綱機第四回デザインアワードの奨励賞を受賞されたナラ工業の事務所「鐵拓」にお邪魔させていただきました。
北海道百年記念塔と同じ素材の外壁、
米澤煉瓦 さんが、ナラ工業のために焼いてくれたそうです。黒い煉瓦がとても素敵でした。
奈良さんのこだわりから、地元愛が感じられます。
この石がここに置かれていることにも、不思議なご縁と物語りがありました。
重厚さと美しさを感じる佇まい。
大学時代に環境を良くしたいと勉強されていた奈良さんが、就職し、バブルの頃に携わっていた開発の中には、「もしかして、環境を悪くしているのでは?」と考えてしまうようなこともあったのだとか。
「北海道の風景をつくりたい」と札幌の会社で設計の仕事をされていた奈良さんは、「北海道の風景は農家がつくっているのでは!」と気づき、「都市のあり方は農業に学ぶべきだ」と考えるようになったそうです。
それが、奈良さんのお父さまのナラ工業の暗渠排水の仕事を引き継がれていく決意に繋がっていかれたんですね。
ところで、「あんきょはいすい」って何でしょうか?
暗渠排水とは、水はけが悪い土地などで、地中に透水管を埋めて水はけを良くする方法です。余剰水を排出し冷湿害の影響を軽減することにより、作物の育成を安定化させることができます。
「暗渠排水は、畑の下の力もち。ナラ工業は、農地を彫刻する会社なんですよ」と教えてもらいました。
日本で最初に暗渠排水用土管が作られたのは札幌農学校(現・北海道大学)にて施工されたそうなのですが、札幌農学校以外で初めて暗渠排水工事が行われたのが、なんと江別だそうです。
明治時代に江別で先進的な工事が行われていたこと、暗渠排水が江別発祥とは知りませんでした。
くらしごと〜暗渠技術で農業の活性化に貢献。株式会社ナラ工業〜
「歴史とつなげて、江別があることを知ってもらいたい」と奈良さん。
「宮沢賢治が地質学者として、北海道に来た時に江別に立ち寄った可能性があるかも?!」との仮説立て、知られざる歴史についても調べてみているというお話しは大変興味深かったです。
さて、暗渠排水の歴史の話から、農の神と呼ばれた育種家・稲塚権次郎さんの話題に。権次郎さんと奈良さんのお父さまの間にもご縁があり、ナラ工業が石川県で暗渠排水をするきっかけにもなったそうですよ。
そして、監督の稲塚秀孝氏が権次郎さんの遠縁になることにも縁を感じ、奈良さんは映画上映に尽力され、
「NORIN TEN 農の神と呼ばれた男稲塚権次郎物語」は、奈良さんを中心とした「江別上映を成功させる会」の活動により、2015年秋、さらに2016年2月にもイオンシネマ江別にて上映されました。
権次郎さんによって開発された「小麦農林10号」は、後に世界の食糧危機を救います。この品種は、江別の名産小麦「ハルユタカ」の先祖でもあるそうですよ。
映画には、江別の小麦畑がロケ地になったシーンもあるんですって。
奈良さんのお話を聞いていると、人の縁や土地との縁で、歴史の物語が作られていくのだなと感じ、不思議なつながりを、とてもステキに思いました。
映画上映の実現の他にも、野幌商店街を中心にイベントや催しを行なってきた奈良さん。活動する中で、情報大学の学生たちと共に取組むようになり、「4年間、江別に住む大学生にも江別の記憶をつくってもらい、第二の故郷と思ってもらいたい」
そして、「子どもたちが江別を好きになれば、将来も江別の街に住み続けたり、街のために何かしたいと考えるようになるかもしれない」と地域の子どもたちと一緒に取り組むまちづくり『サタデーのっぽ』が始まりました。
その当時、小学生くらいだったお子さんが、今ちょうど大人になっている年頃なので、若い世代がまちづくりに関わっている様子を見ると、とても嬉しく思われるそうです。
奈良さんが、蒔いたまちづくりの種が時を経て、芽吹いてきているんですね。
札幌の会社にお勤めをされていた頃、他の市町村で、まちづくりに関わる設計の仕事をしているのに、自分の地元、江別では何もしていないなと、ふと気がついたとのことですが、
「自分のまちでもわくわくしたい」「そこに住んでいる人達が、その空間で作る物語が生まれるような、設計をしたい」とニコニコとお話ししてくれた奈良さん。
「設計して、まちができたから完成ではなくて、それをどう使うかが大事」と、奈良さんの想像するこれからの江別には、子ども達の笑顔が思い描かれているようでした。
こんな風に自分のまちに愛着を持って、「江別が好きだ」と語り、未来のために行動する人がいることが、江別の魅力だなって感動しました。
ステキなお話しをありがとうございました!
住所:北海道江別市野幌代々木町13-1
電話:011-384-5592